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“ウサギは寂しいと死んでしまう”という言葉を、多くの人が聞いたことがあるのではないでしょうか。それって本当なの?どうして?と疑問に思う方もいると思いますが、実は寂しいだけではウサギは死にません。では、どこからそういう話が出てきたのか、諸説ありますが、そのうちのひとつをご紹介します。

ウサギは草食動物のため、具合が悪くなっても本能的にそれを隠す生き物です。飼い主が気付いた時にはものすごく具合が悪くなっている、なんてことも少なくありません。そのため、ウサギをよく観察して、触れて、異常に早く気付いてもらえるように、“ウサギは寂しいと死ぬ”という話になったのだといわれています。

今回は、ウサギによくみられる症状と、そこから想定される疾患について解説していきます。これらの症状が見られるときは、なるべく早く動物病院にご相談ください。


涙の問題:『涙が止まらないウサギさんへ』

 

ウサギも涙を流すことがありますが、それは多くの場合は何らかの疾患を抱えているサインです。目元の毛が常に湿っている、被毛が固まって硬くなっている、瞼や皮膚が赤くなっている、白い目ヤニがついている、などの症状は涙が原因となっています。

これらの症状が見られたときに考えられる疾患としては、角膜損傷、結膜炎、鼻涙管閉塞、歯牙疾患(不正咬合、根尖膿瘍など)、感染症などがあります。

少し涙が出ているだけだから…そのうちおさまるかも…と、様子を見ているうちに、涙で目元が濡れているのを気にして過剰にグルーミングをすることで角膜穿孔(角膜に穴があいてしまう病気)を起こしたり、不正咬合が原因で食欲が落ちたり、涙嚢炎で涙嚢内に膿が蓄積したりすることがあります。最悪の場合、視力を失ってしまうことや、眼球を摘出しなければならない状況にも陥ります。

治療内容も多岐にわたり、点眼や軟膏で済むケースから、歯科処置が必要なケースまであります。重症化してからでは手遅れとなる場合もあるため、早めに動物病院にかかることをおすすめします。

排便の変化:『ウンチが出ないときは要注意!』

ウサギは常に食事をとって、排便している生き物です。ウンチが出ていないときは消化管の動きが止まっている可能性があるため、注意する必要があります。同時に起こりやすい症状としては、食欲がない、じっとして動かない、姿勢が定まらずに体を捩っている、などがあります。

これらの症状が見られたときに考えられる疾患としては、胃内鬱滞、盲腸内鬱滞、消化管閉塞、消化機能低下症などがあります。

数時間前までは元気に過ごしていた子であっても、急にお腹の張りが出ることがあり、状況によっては命の危険を伴うこともある症状です。時間経過とともに内臓器に負担がかかり、ぐったりしてしまうこともあるので、ウンチが出ない、元気がないなどの症状が見られた場合は様子見せずに病院にかかることをおすすめします。

排尿の異常:『尿に血が混ざっているのを見つけたら』

ウサギの尿は通常黄色~乳白色、赤褐色ですが、膀胱や腎臓、子宮などの生殖器に異常が出た場合には真っ赤な尿が出ることがあります。考えられる疾患としては、細菌性膀胱炎、膀胱結石、腎臓結石、尿管結石、子宮腺癌、子宮内膜炎、子宮水腫などがあります。

膀胱炎などの泌尿器疾患はお腹の痛み、違和感からあちこちに排尿したり、尿全体が薄く赤くなったり、泥状のおしっこが出たりします。痛みから食欲がなくなることもあります。様子を見てしまうと慢性化したり、腎臓に負担がかかったりする原因となります。

また、避妊手術をしていないメスウサギは子宮疾患の可能性があります。その場合、痛みや違和感が出ていないにも関わらず、正常尿に血が混ざったり、排尿時以外にも出血が見られたりします。出血が続くことで貧血を起こしたり、腫瘍が他の臓器に転移することもあるので、血が出ているのを見かけたら、元気食欲に問題がなくても早めに動物病院にかかりましょう。

食欲不振:『急にごはんを食べなくなった…』

昨日までは食事をよく食べていたのに、今朝になったら牧草もペレットも野菜も減っていない…ということが、ウサギにはよく起こります。ペレットは食べるけれども牧草は食べない、などの食べムラも食欲不振の一種です。このような症状が出たときに考えられる疾患として代表的なものとしては消化管内鬱滞、消化管内閉塞、消化機能低下症、不正咬合があり、その他にも様々な疾患があります。

ウサギは本来、常に牧草を食べて排便している動物のため、食事をとらないことで消化機能が落ちていきます。ウサギの食欲不振の原因は多岐にわたるため、何が原因で食事を採らないのかをご自宅で判断するのは非常に難しいです。 

“ウサギがごはんを食べないときは危険信号、すぐにごはんを与えたほうがいい!”と思われがちですが、食べない原因が消化管内鬱滞や消化管内閉塞だった場合にはお腹がパンパンに張っていることもあり、無理に食事を与えることで状態が悪くなることもあります。食事を与えたほうがいい状況なのか、そうじゃないのかは診察をしてみないと判断が非常に難しいものです。ごはんを食べなくなって心配な時は、できるだけ早急に動物病院にいらしてください。

呼吸器系の問題:『くしゃみと鼻水の原因とは』

特に子ウサギや高齢のウサギに多い症状として、くしゃみや鼻水があります。出たのが1回だけで鼻水も出ていなければ過度に心配する必要はありませんが、連続性に何度もくしゃみをしたり、色のついた鼻水が出たり、鼻が赤くなったりしている時にはスナッフルなどの感染性鼻炎、スピロヘータによるウサギ梅毒、アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、歯根変性による鼻腔狭窄などのような疾患の可能性があります。これらは感染性の疾患が多く、他のウサギに移ることもあり多頭飼いをしている方は非常に注意が必要です。

くしゃみや鼻水が出ているとき、同居のウサギがいる場合は速やかに別の部屋に隔離しましょう。また、1日に何度も連続性のくしゃみをしている場合は体力を消耗してしまうため、早めの対処が必要です。治療開始が遅れることで慢性化したり、鼻腔内の骨が変形してしまい、完治が難しくなったりします。くしゃみをする様子が数日続いている場合は早めに動物病院にかかりましょう。

顔の腫れ:『ウサギの顔が腫れているかも…?』

ウサギは他の動物と比べて顔周りに膿瘍ができやすい動物です。顎下、頬、鼻の周囲、耳の付け根などが腫れやすい部位になりますが、それ以外にも全身にふくらみができることがあります。原因としては歯根膿瘍、根尖膿瘍、眼窩膿瘍、腫瘍などが考えられます。少しずつ膨らむケースと、1〜2日で急速に膨らみができるケースがあるので注意が必要です。

細菌感染によって起こる膿瘍は、犬や猫と異なりチーズのような硬い膿になるため、治療に時間がかかることが多いです。様子を見ることで感染と炎症を繰り返し、顎の骨が溶けたり、歯がぐらついて食欲不振を起こしたりします。大きくなってからでは治りきらないこともあるので、顔の腫れが見られたときはできるだけ早めに動物病院へかかりましょう。

異常な行動:『顔が傾いている?ぐるぐる回っている?』

顔の傾きや眼の揺れ、首の揺れは神経症状のひとつです。悪化すると同じ方向にぐるぐる回ったり、ローリング(体が転がる症状)が起きたりします。ウサギは犬猫に比べて神経症状を起こす症例が多く存在します。原因としては、エンセファリトゾーン症、パスツレラ症、脳腫瘍、脳内出血、内耳・中耳・外耳炎、前庭疾患、他内臓器疾患などがあります。しかし、ウサギは非常にストレスに弱い動物のため、疾患を抱えていなくても同様の症状が出ることがあります。例えば、引っ越しや環境の変化、車移動などの外出、動物病院へ行くことなど、強いストレス下に晒す必要がある場合は注意しましょう。

神経症状は長時間続くと脳にダメージが蓄積されていきます。治療開始が遅れると食欲不振や全身状態の悪化、最悪の場合命を落とすこともあるような症状です。少しの傾きから症状がみるみるうちに進行していくこともあるので、早めの受診をおすすめします。

まとめ:少しでもおかしいと思ったら早めの相談を

些細な体調変化は毎日一緒にいるがゆえに気付きにくいものです。ウサギは特に、体力の限界まで症状を隠してしまうことがあるので、病気のサインを出していても、慣れていないうちは見落としてしまうかもしれません。ですが、今回紹介したウサギに多く見られる病気のサインは、ご自宅でも見つけられるものがほとんどです。ウサギとのコミュニケーションを積極的に取り、身体に触って、いつもと違うところがないか、毎日の健康チェックをご自宅でも行ってみてください。

それでもどうしても気付くことができない病気は存在します。 そんな時は健康診断を受けることをおすすめします。「病院に行くとウサギが怖がるから、具合が悪くなった時に行けば…」と思われがちですが、ウサギも健康診断を受けることで病院に慣れてくれることがほとんどです。具合が悪くなった時に、急に知らない場所に連れていかれるのはウサギにとってもストレスがかかります。普段から健康診断や体重測定、爪切りなどで来院することで病院に慣れてもらっておくと、行える検査や治療の幅も広がります。

これってもしかして病気なの?と、気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。こんなことで病院に行ってもいいのかな?と思われる方もいると思いますが、悩んだときはそのままにせず、ぜひクロス動物医療センターにいらしてください。

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監修 堀間莉萌獣医師 
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