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ウサギの食事ガイド:主食からおやつまでの完全マニュアル【第1回】:ウサギのための食事の考え方の基本
うさぎの健康的な食生活に欠かせない牧草は、基本食べ放題にしておくことをおすすめします。
ウサギにはとにかくたくさんの牧草を食べてほしい、というのが本音ですが、ウサギの好みによっては食べたり食べなかったりすることがあるのも現実です。お家の子に合わせた物を選ぶ参考になるよう、今回は牧草の種類について説明します。適切な量の繊維質を摂取しないと、消化管内鬱滞や軟便、不正咬合の原因になるので、よく食べてくれるものを探していきましょう。
1.牧草の種類と特徴
牧草は大きく分けて二種類、イネ科とマメ科があります。イネ科はチモシーが主流ですが、他にもイタリアンライグラス、オーツヘイ、オーチャードグラスなどがあります。イネ科は繊維質が豊富で低カロリーであり、栄養バランスが整っているのが特徴のため、基本はどの子もチモシーの一番刈りから試していくことをおすすめします。二番刈り、三番刈りもありますが、一番刈りよりも後の時期に刈り取られるため、繊維質の量と栄養価が低くなります。一番刈りを食べなかった時の補助として考えておくとよいでしょう。
イタリアンライグラスやオーツヘイ、オーチャードグラスはチモシーと比べると柔らかめで嗜好性が高いです。チモシーを食べない子や、不正咬合で柔らかめの牧草しか食べられない子、高齢になって好みが変わってきた子は試してみることをおすすめします。チモシーと比べると価格はやや高価であり、入荷時期が限られることもあるので注意が必要です。
マメ科の代表的な牧草はアルファルファです。高カロリーで成長期に必要なタンパク質とカルシウムが豊富に含まれているので、栄養要求量が多い時期(妊娠出産時期、授乳期、離乳期、成長期)におすすめです。しかし、維持期のウサギにはカロリーが多く肥満になりやすいので、メインで与えることはおすすめしません。
2.抱えている疾患に合わせた選択
歯牙疾患が出てくると牧草を食べにくくなることがあります。ウサギは歯が伸び続ける動物ですが、本来なら牧草をしっかり食べることで歯が摩耗していきます。しかし、年齢とともに歯根部分が湾曲し、歯が通常とは異なる方向にとがってしまう子や、歯根部の炎症により歯が溶けたり抜けたりした子、元々の骨格の異常から歯が舌や頬に刺さりやすい子は、牧草を食べなくなることがあります。例えば、チモシー一番刈りが硬くて咀嚼できないようであれば二番刈り、三番刈りを与えたり、嗜好性の高いイタリアンライグラスやオーツヘイなどを与えてみたりと牧草の種類を変えていく必要があります。
また、高齢になって顎の力が弱くなると硬い繊維質の咀嚼が出来なくなる事もあります。その場合は少量でも栄養価の高いアルファルファを中心に、イネ科の柔らかいタイプの牧草を試していきます。
理想はチモシーの一番刈りですが、食べない牧草を与え続けても意味がないので、少しでも興味を持つ、食べやすい牧草を色々試すことをおすすめします。
しかし、ウサギは非常にグルメで食事にこだわりを持っている子が多くいます。若くて健康なウサギに早くから嗜好性の高い牧草を与えてしまうと、それ以外食べなくなってしまうことがあります。問題なく食べてくれるのであれば、色々な牧草を試すよりも、まずはチモシーの一番刈りをたっぷり与えることをおすすめします。
3.牧草を食べないときは…
急に牧草を食べなくなった場合は病気の可能性があるので、早めに病院にかかることをおすすめします。原因が何であれ、牧草を長期間食べない事で他の疾患を誘発したり、牧草を『食べられないもの』としてウサギ本人が認識してしまったりするからです。一度、牧草を『食べられないもの』として認識した子はどんな種類の牧草を与えても食べなくなります。そうなってしまった子に牧草を食べさせるのは非常に困難なので、注意が必要です。
しかし、特に疾患や身体的な異常がなくても牧草を食べる量が減ることがあります。それは牧草の“質”の変化でおこります。ウサギはグルメで味や触感にこだわる子が多いので、質の落ちた牧草は食べなくなります。開封後長期間たって香りが飛んでしまったもの、湿気でいたんでしまったものなどは嗜好性が落ちます。同じ商品でもロットが変わることで食べなくなることもあります。牧草はあまり大袋で購入せず、乾燥剤などをうまく利用し、常に新鮮なものを与えられるようにしておきましょう。
色々試したけれども、どうしても牧草を食べてくれない子の場合には、ペレット牧草をおすすめしています。通常の牧草よりは繊維質が少ないので、歯の摩耗などにはあまり有効ではありませんが、消化機能維持に必要な繊維質を摂取することができます。しかし、商品によっては嗜好性を高めるために添加物などが多く含まれているものもあります。できるだけ牧草が主成分となっている商品を選ぶようにしましょう。
また、牧草を食べなくなったからといってケージ内に置かなくなると、触れる機会がなくなり、更に食べなくなってしまいます。食べなくなってしまった場合にも少量ずつでいいのでケージの中には牧草をおいておきましょう。
牧草はウサギの食事管理の基盤です。普段の与え方から疾患が起きた時のサポートまで、当院ではご相談を受け付けております。どうぞお気軽にご来院ください。
監修 堀間莉萌獣医師
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