ワンちゃん猫ちゃんのお口のお悩みは、成長とともに変化していきます。そしてもちろん、子犬・子猫の時期から老犬・老猫になるまで、年齢に応じたケアが大切です。
今回は、ライフステージに合わせた適切なデンタルケアのポイントを詳しく解説します。
1. 知っておきたい、デンタルケアの重要性
歯の健康が及ぼす影響
ワンちゃん猫ちゃんの歯や歯茎の状態は、全身の健康に大きく影響を及ぼします。特に歯周病は、進行すると口臭、痛み、歯の脱落等を引き起こし、ストレスや苦痛をともなう病気です。さらに、口腔内のトラブルにとどまらず、下顎の骨折や、心臓・腎臓の疾患を招くことも。
歯周病について詳しくお知りになりたい方は、こちらの記事をご覧ください。
適切なデンタルケアを行うことで、これらのリスクを低減し、ワンちゃん猫ちゃんの健康寿命を延ばすことができます。飼い主様が日常的なケアの大切さを理解し、正しい方法で実践することが重要です。
年齢に合わせたケアを
ワンちゃん猫ちゃんのデンタルケアは、成長に合わせて変えていく必要があります。
パピーの時期には、人間の子どもと同じように、乳歯から永久歯への生え変わりがあります。それにともなって、歯がかゆくなる、乳歯がうまく抜けないなどの問題が発生します。
一方、シニア期には歯や歯茎が弱まり、歯周病のリスクも一段と高まります。体力や免疫力も落ちるため、病気の影響や治療の負担が大きくなることにも注意が必要です。
ここからは、ライフステージに応じた適切なケアを見ていきましょう。
2. 子犬・子猫のデンタルケア
乳歯はいつ抜ける?永久歯って何本?
子犬・子猫の乳歯は、生後2ヶ月頃までに生え揃い、生後3〜7ヶ月で永久歯に生え変わります。犬の乳歯は28本、永久歯は42本、猫の乳歯は26本、永久歯は30本です。
乳歯が抜ける順番には個体差がありますが、一般的には前歯から奥歯に向かって順に抜けていきます。ただし、犬では犬歯が最後に生え変わります。
乳歯は通常小さくて細いのに対し、永久歯はより大きく、丸みを帯びた形状をしています。歯の本数と形に注意しながら、生え変わりが順調に進んでいるかどうかを随時観察し、問題がある場合は早めに獣医師に相談しましょう。
乳歯遺残と不正咬合
永久歯がしっかり生えているにもかかわらず、乳歯が自然に抜けずに残ってしまっている状態が、「乳歯遺残(にゅうしいざん)」です。乳歯遺残は永久歯の正常な成長を妨げ、歯並びの異常である「不正咬合(ふせいこうごう)」を引き起こすことがあります。また、歯が重なって生えてしまうことで、歯垢や歯石が蓄積しやすくなり、歯周病の原因にもなります。
乳歯遺残の治療は、全身麻酔下での抜歯です。子犬・子猫の負担を軽減するため、避妊・去勢手術の際に、併せて行うことが推奨されます。
不正咬合は、状態によっていくつかの種類に分類されます。原因も乳歯遺残だけでなく、遺伝や顎の発育不全などさまざまです。不正咬合により咀嚼が困難になったり、口の中が傷ついてしまうことがあるため、歯並びに異常が見受けられたら動物病院の受診が必要です。
楽しいデンタルケアにするために
幼齢期のデンタルケアは、生え変わりの時期から始めることが理想です。歯垢を取り除き、歯の健康を保つためには、歯磨きが最も効果的な方法と言われています。お迎えしてすぐにトレーニングを開始し、いつでも歯磨きを始められるようにしましょう。
また、生え変わりの間は歯がかゆい時期でもあり、ワンちゃん猫ちゃんはいろいろなものを噛みたがります。家具や人間の手足まで噛んでしまったり、噛み砕いたおもちゃの破片を誤飲してしまうことも少なくありません。パピー用のガムや丈夫なおもちゃを使って、ストレスを解消しながらケアを行うことも大切です。
デンタルケアが家族みんなにとって楽しい時間となるよう、無理なく習慣づけましょう。
3. 成犬・成猫のデンタルケア
毎日の歯磨きを習慣にする
大人のワンちゃん猫ちゃんのデンタルケアにおいても、日常的な歯磨きが最も重要です。子犬・子猫のうちに歯磨きを習慣化し、可能な限り毎日、最低でも3日に一度は行いましょう。もちろん、大人になってから始めても遅すぎることはありません。
どうしても歯磨きが苦手な子は、おもちゃやおやつを使ったケアで代替することで、ある程度の効果は期待できます。歯磨きのために愛犬・愛猫との関係を悪化させたり、過度なストレスを与えたりする必要はありません。
歯磨きの必要性や正しい頻度、詳しいやり方については、こちらの記事をご覧ください。
定期的な歯科検診とスケーリングも忘れずに
成犬や成猫は、動物病院で定期的に歯科検診とスケーリング(歯石取り)を受けることが推奨されます。これにより、見逃しがちな初期の歯周病や口腔内の異常を早期に発見し、重症化する前に適切な処置を行うことができます。特にスケーリングは、歯石の蓄積を防ぐための効果的な手段です。
少なくとも年に一度は獣医師によるチェックを受け、ご家庭でのケアを見直しましょう。
スケーリングについて詳しくお知りになりたい方は、こちらの記事をご覧ください。
4. 老犬・老猫のデンタルケア
老化によるお口の変化
シニア期に入ると、ワンちゃん猫ちゃんの口腔内はさまざまな老化現象に見舞われます。歯茎が弱くなり、歯が抜けるリスクが高まるだけでなく、歯周病が進行しやすくなるのもこの時期です。若齢の頃から蓄積した歯石により歯周病が重症化したり、人間と同じように免疫力が低下し、細菌感染を起こしやすくなります。
このため、高齢犬・高齢猫では、特に注意深いデンタルケアが求められます。年齢に適したデンタルグッズを使用し、お口の健康を守りましょう。
優しく無理のないケアを
高齢のワンちゃん猫ちゃんには、年齢に応じたデンタルケアが必要です。歯が弱くなっていることが多いため、柔らかい歯ブラシを使って優しくケアを行います。また、硬い歯磨きガムやおもちゃは避け、歯に負担をかけないよう心掛けましょう。
また、唾液の分泌を促進してあげることも大切です。唾液には抗菌作用があり、口腔内の細菌の増殖を抑制してくれますが、加齢とともに分泌量は低下します。おもちゃのロープを噛ませて遊んだり、散歩などの運動で代謝を上げることで、唾液の分泌を促すことが効果的です。また、活動量が増えることで水をよく飲むようになり、口の中の乾燥を防いで、良好な口腔環境を維持することにつながります。
治療もシニアには大きな負担
実は、3歳以上のワンちゃん猫ちゃんの約80%が歯周病を患っていると言われています。歯周病が進行すると、治療には大きな負担がかかります。多くの場合、歯石除去のためにスケーリングを行いますが、これは全身麻酔下で実施されるため、特に高齢犬・高齢猫では大きなリスクをともないます。
そのため、幼い頃からの予防と早期発見が非常に重要です。ご家庭でのデンタルケアを欠かさずに行い、定期的に獣医師の診察を受けて、歯やお口の健康をしっかりとチェックしましょう。
当院では、令和6年6月1日〜8月31日の期間、「デンタル応援キャンペーン」を実施しております。
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※検査・麻酔・抜歯の代金は別途かかります。
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※一部製品は除きます。
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この機会に是非ご来院ください。
ライフステージに応じたデンタルケアは、ワンちゃん猫ちゃんの健康寿命を延ばす鍵です。日常的なお手入れと定期的な歯科検診を通じて、お口の健康を守りましょう。
愛犬・愛猫の歯や口のことでお悩みやご不安がございましたら、クロス動物医療センター港南台までお気軽にご相談ください。