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ウサギの目から涙が流れていて止まらない。目元の毛が常に湿っている。
そんな症状を見かけたことはありませんか?
多くの場合、そこには何らかの病気が潜んでいます。
今回はそのなかから、ウサギの歯牙疾患について詳しく解説し、適切な対応をご紹介します。
ウサギの「涙が止まらない」症状に関連する他の疾患も順次取り上げていきますので、ぜひご参考にしてください。

 

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ウサギの歯牙疾患とは

ウサギの歯は常生歯という生涯伸び続ける構造のため、年齢や種類に関係なく歯牙疾患(しがしっかん)が起こる可能性があります。
歯のトラブルはウサギの食生活に大きな影響を与え、健康を脅かす原因となるため、早期の発見と治療が重要です。

原因

歯牙疾患とは歯のトラブルの総称であり、不正咬合(ふせいこうごう)、過長歯(かちょうし)、歯根過長(しこんかちょう)、根尖膿瘍(こんせんのうよう)などが挙げられます。

不正咬合
遺伝的要因や食事内容、生活環境などが原因で噛み合わせが悪くなり、歯が適切に摩耗せずに、異常な方向に伸び続ける疾患です。
気がつきやすいのは前歯の不正咬合ですが、奥歯でも起こります。
ケージや金網など硬いものをかじる行為は歯根に負荷をかけ、不正咬合の原因となるので注意が必要です。

過長歯
遺伝的要因や食事内容により、歯が適切に摩耗せず異常な長さに伸びた状態を指します。
繊維質が不足した食事はウサギの歯の自然な摩耗を妨げます。歯の健康を保つためには牧草を中心とした食事が重要です​​​​​​。

歯根過長
歯が歯根方向に成長してしまう状態を指します。
歯根が伸びることで鼻涙管や涙嚢(るいのう)、鼻腔内を圧迫し、目や鼻のトラブルを引き起こします。
歯根で感染や炎症が起こると、膿瘍や呼吸困難を誘発することもあります。

根尖膿瘍
歯の感染や損傷が原因となり、膿が歯根の周囲に溜まることで痛みや腫れを引き起こす疾患です。
進行すると、歯根の変形、顎の骨が溶ける、顔が腫れる、顔の皮膚に穴があいてそこから膿が出てくる、などの症状が起こります。

症状

歯牙疾患は主に、食欲不振、涙が出る、顔が腫れる、などの症状により発覚します。
不正咬合や過長歯により、歯が異常な方向に伸びたりとがったりすることで、舌や頬に傷ができ、その痛みや不快感から食事をとらなくなります。
完全に食欲がなくならずとも、ペレットなどの固い物を避け、生野菜や牧草の葉の部分など、柔らかい物を好んで食べるようになることがあります。
何も食べていないのに口を動かし続ける、よだれで口周りが常に湿っている、食事を食べるときに大げさに顎を動かす、などの症状が見られる場合は、口腔内の痛み・違和感が出ている可能性が高いため注意が必要です。
また、歯根過長や根尖膿瘍では、顔の一部が腫れることがあります。特に頬や顎下で多く見られます。
腫れることで痛みを伴い、触られるのを極端に嫌がることもあります。
頬の腫れにより鼻涙管が圧迫されて涙が鼻に流れていかず、涙や目やにが増加したり、歯根の感染に伴う炎症が眼球の奥のくぼみやその周囲の組織に広がることで、白目が赤くなることもあります。
食欲不振が長期的に続くと、体重が少しずつ減少していきます。
ウサギの食欲不振は内臓の働きにも悪影響を及ぼします。消化吸収機能が衰え、著しい体力の低下を引き起こすため、注意が必要です。

診断

噛み合わせや歯根部分の評価は、顔の触診、スコープによる口腔内の観察(噛み合わせ、舌や頬の傷の有無の確認)、頭部のレントゲン撮影などによって行います。
ウサギの性格や口腔内の状態によっては、細部まで見ることができないケースもあります。その場合は、よだれが多くないか、舌や頬に傷ができていないか等を確認することで診断を行っていきます。

治療

不正咬合や過長歯に対する治療は、問題となっている歯を切る、削るなどの処置が主となります。そうすることで正常な噛み合わせに戻し、歯の過剰な成長を防ぎます。
しかし、一度の処置で完治するケースは少なく、定期的な処置が必要なことがほとんどです。
根尖膿瘍で感染を強く起こしている場合は、抗生物質や消炎鎮痛剤を内服で使用します。これにより感染を抑え、炎症を軽減します。
顔周りの腫れが強い場合や、膿が多量に溜まっている場合は、膿を排出するための手術が必要となります。この処置は強い痛みを伴うため、全身麻酔や鎮静をかけて行います。
重度の歯牙疾患では、感染した歯や過剰に成長した歯、歯根が溶けてグラついている歯の抜歯が必要です。そうすることで感染を抑え、目や鼻涙管への影響を軽減させます。

予後

不正咬合に伴う食欲不振は、早期に治療を開始して痛みや不快感を取り除くことで改善が期待できます。
一方で、遺伝的な要因が絡んだ不正咬合の場合、継続的な通院と歯科処置が必要です。再発する可能性が高いため、一度軽快しても定期的に歯科検診を行いましょう。
歯根過長、根尖膿瘍は完治が非常に難しい疾患です。悪化を防ぎ、食欲が落ちないように治療を行っていくことや、併発疾患の治療が主となります。
白目の充血や涙、目やにが増えている場合は、原因疾患となる感染症の治療や鼻涙管の洗浄により症状が軽減していきますが、歯牙疾患が根本にある場合は完治が難しく、対症療法を継続して行う必要があります。
また、歯の健康維持のためには、繊維質を豊富に含む食事を与えることが最も重要です。おやつ類の糖分はウサギの歯に悪影響を及ぼすため、極力控えましょう。

 

歯牙疾患による食欲不振は長期にわたるケアが必要となり、消化吸収機能にも影響を与えるため、少しでも早い段階で治療を開始することが重要です。
歯の健康が、目や全身の健康にもつながります。
ウサギの目や歯に関するご相談は、クロス動物医療センター港南台までお気軽にどうぞ。

 

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監修 堀間莉萌獣医師 
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