【変性性腰仙椎狭窄症(馬尾症候群)の患者様情報】
8歳、ジャーマンシェパード、27kg、未避妊雌
【主訴】
当初は、起き上がる際の痛みなどの症状のみであったが、最近はかなり歩きづらそうにしている。保存的治療に反応がないため、セカンドオピニオンとして当院に来院。
【変性性腰仙椎狭窄症(馬尾症候群)とは】
活発な中齢から高齢の中型から大型犬や、まれに猫に散発する慢性変性性疾患である。
腰椎と仙椎の接合部に様々な病態(関節異常に起因した不安定性、黄色靭帯や関節包の肥厚など)により生じた脊柱管狭窄によって、脊髄神経に圧迫性損傷が起きる。
【変性性腰仙椎狭窄症(馬尾症候群)の症状・原因】
腰椎と仙椎の接合部に疼痛反応、後肢の跛行などの症状が起きる。
競技犬などの場合には、ジャンプなどのパフォーマンスが低下する。
【X線検査所見】
伸展時画像にて、第7腰椎より第1仙椎が腹側に下がっていることが確認できる。
また、第1仙椎椎弓が第7椎弓と重なって脊柱管内容物を背側から圧迫している。
【MRI検査所見】
第7腰椎と第1仙椎間で腹側および背側から馬尾神経を圧迫している(黄色矢頭)
同椎間において骨のアライメントは不整に見受けられ、椎体腹側には顕著な骨増生所見を認める(橙矢頭)
【変性性腰仙椎狭窄(馬尾症候群)の外科治療】
外科治療には減圧手術もしくは牽引固定手術、そして両者の併用法が報告されている。
本症例においては、レントゲン検査・MRI検査所見などから総合的に判断し、減圧手術と牽引固定手術の併用を選択した。
・減圧手術(背側椎弓切除術 Dorsal laminectomy)
第6腰椎-第7腰椎-第1仙椎の棘突起に沿って軸上筋を切開・分離後に第7腰椎から第1仙椎に至る範囲の背側椎弓板を露出した。
背側椎弓板の中央部を除去して、脊柱管内を走行する馬尾神経を露出した。
・牽引固定手術(経関節固定法、支持固定法)
経関節ピンを使用して経関節固定法と、スクリューおよび骨セメントを使用して支持固定法を実施した。
【術後X線初見】
【術後管理】
術後48時間程度、麻薬性鎮痛薬などを使用しながら適切な鎮痛・安静を保ち、その後も消炎鎮痛剤などを使用しながら安静を維持した。減圧手術単独の場合には4~8週間、減圧手術と牽引固定手術を併用した場合には、8~12週間の安静期間が必要とされている。
当院では変性性腰仙椎狭窄症(Degenerative Lumbosacral Stenosis:DLSS)(馬尾症候群)や様々な症例に関するご相談や、セカンドオピニオンも承っております。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。ご予約やご相談は、下記のクロス動物医療センター公式LINEでも24時間受け付けておりますので、ぜひご利用ください。